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土地家屋調査士過去問2020年(令和2年)

第1問 次の対話は,権利能力なき社団に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち,判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。

教授:ある団体が法人格を有しない社団すなわち権利能力なき社団であると認められるためには,どのような要件を満たす必要がありますか。
学生:ア 団体としての組織を備え,多数決の原則が行われ,構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し,その組織において代表の方法,総会の運営,財産の管理その他団体として主要な点が確定しているものであることが必要です。

教授:権利能力なき社団Aの代表者であるBが,Aを代表して,Cとの間で,Aの活動に充てるための資金として100万円を借り受ける金銭消費貸借契約を締結しました。この場合において,Bを含むAの構成員各自は,Cに対して,当該金銭消費貸借契約に基づく貸金返還債務を負いますか。
学生:イ 権利能力なき社団の取引上の債務は,その社団の構成員全員に帰属することになるので,Bを含むAの構成員各自は,Cに対して,直接の貸金返還債務を負います。

教授:権利能力なき社団Aの資産である不動産について,これを登記するためにはどのような方法がありますか。
学生:ウ A名義で登記をすることはできませんが,Aの構成員全員による共有名義で登記をすることや,Aの代表者であるBの個人名義で登記をすることは可能です。

教授:権利能力なき社団において,規約で定められていた改正手続に従い,総会における多数決により,構成員の資格要件を変更する旨の規約の改正が決議された場合,当該決議について承諾をしていない構成員に対して,当該決議により改正された規約は適用されますか。
学生:エ 権利能力なき社団の構成員の資格要件の変更については,構成員各自の承諾を得る必要があり,構成員の資格要件を変更する旨の規約の改正が総会における多数決により決議された場合であっても,当該決議について承諾をしていない構成員に対しては,改正後の規約は適用されません。

教授:それでは,権利能力なき社団である入会団体において,共有の性質を有する入会権の処分について,入会団体の構成員全員の同意を要件とすることなく,入会団体の役員会の全員一致の決議に委ねる旨の慣習が存在する場合,この慣習に基づいてされた入会権の処分は効力を有しますか。
学生:オ 共有の性質を有する入会権については,各地方の慣習よりも民法の規定が優先的に適用されますから,この慣習に基づいてされた処分は,共有物の処分に関する民法の規律に反するものとして,効力を有しません。


第2問 不動産の取得時効に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。

ア 甲不動産を所有の意思なく占有していたAが死亡し,Bがその占有を相続により承継した場合には,Bは,新たに甲不動産を事実上支配することによって占有を開始し,その占有に所有の意思があるとみられ,かつ,Bの占有開始後,所有権の時効取得に必要とされる期間その占有を継続したとしても,自己の占有のみを主張して甲不動産の所有権を時効取得することはできない。

イ Aから甲不動産を買い受けてその占有を取得したBが,売買契約当時,甲不動産の所有者はAではなくCであり,売買によって直ちにその所有権を取得するものでないことを知っていた場合には,Bは,その後,所有権の時効取得に必要とされる期間,甲不動産を継続して占有したとしても,甲不動産の所有権を時効取得することはできない。

ウ 甲不動産につき賃借権を有するAがその対抗要件を具備しない間に,甲不動産に抵 当権が設定されてその旨の登記がされた場合には,Aは,その後,賃借権の時効取得に必要とされる期間,甲不動産を継続的に用益したとしても,抵当権の実行により甲不動産を買い受けた者に対し,賃借権の時効取得を対抗することはできない。

エ Aが,甲不動産を10 年間占有したことを理由として甲不動産の所有権の時効取得を主張する場合,その占有の開始の時に,Aが甲不動産を自己の所有と信じたことにつき無過失であったことは推定されない。

オ 取得時効を援用する者が,時効期間の起算点を任意に選択し,時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることは許されない。


第3問 相隣関係に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正誤を答えて下さい。

ア 他の土地に囲まれて公道に通じない土地(以下「袋地」という。)の譲受人は,袋地について所有権の移転の登記を経由しなくとも,その袋地を囲んでいる他の土地(以下「囲繞地」という。)の所有者に対して,公道に至るため,囲繞地を通行することができる権利(以下「囲繞地通行権」という。)を主張することができる。

イ 他の土地及び水路によって囲まれており,水路を通行すれば公道に至ることができる土地の所有者は,公道に至るために,当該他の土地を通行することはできない。

ウ 自動車による通行を前提とする囲繞地通行権は,囲繞地の所有者の承諾がなければ成立しない。

エ 囲繞地について囲繞地通行権を有する袋地の所有者が,囲繞地に通路を開設するためには,囲繞地の所有者の承諾を要する。

オ 共有物の分割によって袋地を生じた場合に,袋地の所有者が,公道に至るため,他の分割者の所有する土地について有する通行権は,当該他の分割者の所有する土地に特定承継が生じた場合であっても,消滅しない。


第4問 申請人Aが土地家屋調査士Bに対して土地の合筆の登記の申請を委任し,A作成の委任状には委任事項として,「土地の合筆の登記申請に関する一切の権限」とのみ記載されている。BがAを代理して土地の合筆の登記を申請するに際し,この委任状を代理権を証する情報として提供した場合におけるBの権限に関する次のアからオまでの記述のうち,正誤を答えて下さい。

ア Bは,土地の合筆の登記を申請した後にAが登記申請意思を撤回した場合,当該申請を取り下げることはできない。

イ Bは,土地の合筆の登記の申請の際に納付した登録免許税に過誤納があった場合,その還付金を受領することができない。

ウ Bは,電子申請の方法により,土地の合筆の登記を申請する場合,添付情報として,登記識別情報を提供することができる。

エ Bは,電子申請の方法により,土地の合筆の登記を申請し,当該登記が完了した場合,Bの使用に係る電子計算機に備え付けられたファイルに記録する方法で,登記識別情報の通知を受けることができる。

オ Bは,土地の合筆の登記を申請した後,当該申請が却下された場合,却下処分に対し,Aの代理人として審査請求をすることができる。


第5問 法定相続情報一覧図に関する次のアからオまでの記述のうち,正誤を答えて下さい。

ア 所有権の登記名義人の相続人が土地の分筆の登記を申請するに当たり,当該土地の所在地を管轄する登記所の法定相続情報一覧図つづり込み帳に,当該登記名義人の法定相続情報一覧図がつづり込まれている場合には,当該法定相続情報一覧図の写しに記載された法定相続情報番号の提供をもって,相続があったことを証する情報の提供に代えることができる。

イ 所有権の登記名義人の相続人が,土地の分筆の登記を申請するに当たり,法定相続情報一覧図の写しを提供して相続があったことを証する情報の提供に代えた場合,当該相続人は,当該法定相続情報一覧図の写しの還付を請求することはできない。

ウ 所有権の登記名義人の相続人が,土地の合筆の登記を申請するに当たり,法定相続情報一覧図の写しを提供して相続があったことを証する情報の提供に代える場合,この法定相続情報一覧図の写しは,作成後3月以内のものでなければならない。

エ 被相続人Aの妻Bが相続人から廃除されたため,Aの子Cのみが相続権を有する場合において,Cが,所有権の登記名義人がAである土地の分筆の登記を申請するに当たり,法定相続情報一覧図の写しを提供したときは,Bが廃除された旨の記載がされていることを証する戸籍の全部事項証明書の提供を省略することができる。

オ 地図に表示された土地の表題部所有者の相続人が,地図の訂正の申出をする場合,「法定相続情報一覧図の写し」の提供をもって,相続があったことを証する情報の提供に代えることができる。


第15問 次の〔登記記録〕の中の( ア )から( オ )までの空欄に後記の〔語句群〕の中から適切な語句を選んで入れると,敷地権付き区分建物の登記記録となる。( ア )から( オ )までの空欄に入れるべき語句が含まれていないものは,後記1から5までのうち,どれか。ただし,同一の文字の付された空欄には同一の語句が入り,異なる文字の付された空欄に同一の語句は入らないものとする。 登記記録
〔語句群〕

敷地権,1 階部分,使用貸借権,1 階,非敷地権,平家建,
地上権,一部抹消,分割,変更,敷地権消滅, 1 階建,新築

1  使用貸借権  敷地権   地上権
2  分割     新築    1 階
3  敷地権消滅  1 階建   1 階部分
4  変更    非敷地権  平家建
5  一部抹消   1 階   1 階部分


第19問  次のアからオまでの記述のうち,第1欄及び第2欄の登記の申請又は嘱託をする場合の各登録免許税が,いずれも第3欄に記載された内容となるか正誤を答えて下さい。なお,当該申請又は嘱託は,登録免許税の額が最も低額となるように申請するものとする。

第1欄
第2欄
第3欄
いずれも所有権の登記のある2 筆の土地の合筆の登記の申請
所有権の登記のある土地の一部 の地目が墓地になったためにす る一部地目変更及び当該土地を 2 筆にする分筆の登記の申請
1.000円
2 筆の土地の所有権を敷地権とする所有権の登記のある1 個の区分建物を2 個の区分建物とする再区分の登記の申請 国と私人が共有する所有権の登 記のある土地を2 筆にする分筆 の登記の申請
2.000円
一棟の建物にいずれも所有権の登記のある2 個の区分建物が属する場合に当該2 個の区分建物 を1 個の区分建物でない建物とする区分建物の合併の登記の申請 いずれも所有権の登記のある2 個の建物が合体して1 個の建物 となったためにする合体による 登記等の申請
非課税
いずれも所有権の登記のある2 筆の土地の合筆の登記を,錯誤を原因として抹消する登記の申請 私人を所有権の登記名義人とす る土地の一部を取得した地方公 共団体が,私人に代位して行う 当該土地を2 筆にする分筆の登 記の嘱託
非課税
1 個の建物の表題部所有者の住所の変更の登記の申請 宗教法人が所有権の登記名義人 である土地を2 筆にする分筆の 登記の申請
非課税



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